【2026年10月ニュースレター】秋の経営点検「最低賃金1,177円・金利1.25%・熊本から世界へ|コスト高を稼ぐ力に変える」
BRIEF.
Vol. 8 | 2026年10月号
今月のトピック
秋の経営点検、
コスト高を
稼ぐ力に変える
最低賃金の大幅引き上げと3カ月ぶりの利上げ——この秋、人件費と金利という2つのコストが同時に上がり始めた。守りを固めながら攻めの一手をどう打つか。熊本発の新しい動きとともに考えます。
最低賃金1,177円時代——「値上げを言える会社」だけが残る
10月から最低賃金が過去2番目の上げ幅で順次発効。人件費の上昇を吸収しきれない中小企業に残された道は、価格転嫁の「交渉力」を磨くことだ。

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2026年度の最低賃金は全国加重平均で56円増の1,177円。10月1日から12月にかけて都道府県ごとに順次発効し、最高は東京都の1,280円、最低は宮崎県の1,085円となった。引き上げ幅は昨年の66円に次ぐ過去2番目の大きさだ。熊本県も国の目安を2円上回る58円増の1,092円(12月1日発効)に決まった。
「時給+α」の重み
見落とされがちなのは、時給の上昇分に社会保険料の事業主負担(概ね15%相当)が上乗せされる点だ。さらに最低賃金近くの従業員だけを引き上げれば、既存社員との賃金の逆転が起き、賃金テーブル全体の見直しが避けられない。人件費の上昇は「パートの時給」の話ではなく、経営全体の構造問題である。
価格転嫁率54.2%の現実
中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査」によれば、価格交渉が行われた割合は90.7%に達した一方、価格転嫁率は54.2%にとどまる。コスト別では原材料費55.7%に対し、労務費は50.0%と転嫁が遅れている。
交渉の場は整いつつあるが、とりわけ「人件費を理由にした値上げ」は理解を得にくい。一方で2026年1月には下請法を改正した「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行され、協議に応じない一方的な代金決定は禁じられた。制度は受注側の追い風になっている。
「根拠」と「代替案」で交渉する
転嫁に成功する企業に共通するのは、①最低賃金・社保負担の上昇額を製品やサービス単位に落とし込んだ根拠資料、②値上げと引き換えに納期・ロット・仕様を見直す代替案、③値上げを機に低採算の取引から撤退する覚悟——の3点だ。9月の価格交渉促進月間を経た今、この秋の交渉が来年の利益率を決める。
01
政策金利1.25%——「金利のある世界」で問われる資金繰りの耐性
日銀が3カ月ぶりに利上げし、政策金利は1.25%へ。借入金利の上昇は、いよいよ中小企業の損益に表れ始める。今から打てる手を整理する。

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日本銀行は9月17・18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.00%から1.25%へ引き上げた。6月以来3カ月ぶり、植田総裁の就任後では最も短い間隔での利上げだ。決定は賛成7・反対2と割れたものの、声明では利上げ後も「緩和的な金融環境は維持される」と明記し、正常化路線の継続をにじませた。
0.25%の重み
大手銀行はすでに変動金利の引き上げに動いており、短期プライムレートに連動する事業性融資の金利も順次上がっていく。0.25%は小さく見えるが、積み重なれば決して無視できない。
帝国データバンクの試算によれば、企業の借入金利が0.25%上昇すると、1社当たり平均で年間約46万円の支払利息が新たに発生し、経常利益を平均1.9%押し下げる。同社の調査では、借入金利の上昇が業績に「マイナスの影響がある」とする企業は57.6%にのぼった。
次の利上げを織り込む
民間シンクタンクの間では、12月会合で1.50%、2027年中に2.00%への到達を見込む声もある(第一生命経済研究所)。「今の金利」ではなく「1〜2年後の金利」で返済計画を試算し直すことが、経営者の最初の仕事になる。
金利耐性を高める3つの手
①借入の固定・変動の比率を見直し、長期資金は固定化を検討する、②在庫や売掛金を圧縮して資金の回転を速め、借入そのものを減らす、③メインバンクに事業計画と賃上げ・価格転嫁の取り組みを示し、条件交渉に臨む。金利のある世界では、「稼ぐ力」を数字で説明できる企業ほど有利な条件を引き出せる。ゼロ金利時代の常識を、この秋に一度リセットしたい。
02
熊本城ホールから世界へ——「起業の街」熊本は次のステージに進めるか
10月6日、世界規模のピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ」の九州予選が熊本で開かれる。地元の起業エコシステムは、世界とつながる段階に入った。

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10月6日、熊本城ホールで「Startup World Cup 2026 九州予選」が開催される。米ペガサス・テック・ベンチャーズが主催し、熊本市が共催。選考を勝ち抜いたファイナリスト10社が日本語でピッチに臨み、優勝企業は世界決勝への切符を手にする。世界決勝の優勝者には約1億5千万円の投資賞金が用意されている。
「見る側」から「つながる側」へ
当日は熊本城ホールでのブース展示やネットワーキングパーティー、肥後銀行本店での特別セミナーも同時に開かれる。登壇しない地元経営者にとっても、全国の起業家や投資家と直接つながれる貴重な機会だ。自社の課題を持ち込み、解決策を持つスタートアップを探す——そんな参加の仕方もある。
Startup World Cup公式サイトによれば、九州予選(2026年10月6日・熊本城ホール)にはファイナリスト10社が登壇。世界決勝の優勝者には約1億5千万円の投資賞金が贈られる。
裾野を広げる育成プログラム
熊本市は起業家の発掘・育成にも力を入れる。「HIGO CANVAS(肥後キャンバス)」は設立10年以内のスタートアップや起業予定者を対象に、8月から翌年1月まで月1回のワークショップと個別メンタリングを実施し、最大90万円の成長資金を用意。2027年2月25日のデモデイで成果を披露する。県も「くまもと未来づくりスタートアップ補助金」で、地域課題に挑む起業を後押ししている。
地場企業こそ「最初の顧客」に
エコシステムを強くするのは起業家だけではない。スタートアップの最初の顧客になる、実証の場を提供する、少額でも出資する——地場企業が関わりを持つことで、熊本発の挑戦は加速する。人件費や金利の上昇で既存事業の効率化が迫られる今こそ、外部の新しい技術や発想を取り込む好機だ。
03
値決めは経営である。
— 稲盛和夫(京セラ・KDDI 創業者)

